福岡市の大濠公園能楽堂で行われた「万作の会」に行きました。
毎年松の内に開催される、人間国宝の野村万作氏とご子息の萬斎氏率いる能楽の会です。
初舞、狂言と幽玄の世界を楽しみました。
出典:http://www.ohori-nougaku.jp/
優雅で直線的な立ち姿とすうーっと地を這うようなあの歩きかた。
どなたかが、あの動きは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもの、
と言われましたが、確かに、立ち姿も止まっているのだが止まっていない。
そして、すーっと足が運ばれるときは時空を超えて何かが運ばれてくるような力を感じます。
まさに、余分なものを取り除いた、優雅で柔和で典麗な美です。
途中、ふと、王羲之の楷書「孝女曹娥碑」を思いました。
孝女曹娥は、美しくも哀しい物語の主人公ですが、
その儚い美少女の姿が舞台を勤める萬斎さんに被ります。
体勢を低くして角度をつけないで入っていく筆運び。
編と旁が入り込むあたりの絶妙なバランスは、狂言の姿勢や、リズムに通じるようです。
(くしくも4月から、我が社中では楷書は「考女曹娥碑」です。只今、教材制作中)
久しぶりに、幕もなく、ベルもなく、静けさと余韻ののこる洗練された古典芸能に
酔いしれました。案内人の友に深謝。