見渡せば桜柳をこきまぜて都ぞ春の錦なりけり。
今年は、福岡で桜を見ます。
なんと見事なことでしょう。柳、椿も桜にまじっています。
桜には、たくさんの思い出やエピソードがありますが、桜のころ
毎年思いだすことがあります。
それは、今から、18年前の桜の時期、東京の朗読家の友人から一通の葉書を受け取りました。
そこには、「この年になり、初めて桜をみて涙をながした」とありました。
桜の花びらは、空の色を内在し、空は桜の色を吸収して絶妙なコントラストを
見せる。自然が生み出すどうしようもない美しさに涙がでた・・・
「作品を書くということ。それは、技巧に走り小手先作業であってはならない」
耳慣れた言葉でしたが、それがはっきり見えたのはこの葉書を手にし
福岡県朝倉市秋月城跡の桜並木に立ち、揺らぐ桜花を下から眺めた時でした。
空の色は桜と重なり、桜も空の下で、絶妙な色に変化しています。
まさに「薄墨の夢の中なる桜花」です。自然の織りなす美に圧倒される思いでした。
作品のあり方に迷っていた時期でもあり、迷いが吹っ切れた瞬間でした。
書くということ。それは、「あるべきよう」それ以来、わたしの座右の銘になっています。