筆工房を訪ねて

紅葉も美しい安芸の宮島を訪ね その足で熊野の筆匠 仿古堂さんに
お邪魔しました。私が最初にここの筆を使わせ頂いたのは、学生の頃で「玄妙」と
いう筆でした。穂先がたっぷりとしていて木簡などもこの筆で書いていたように思います。

今の私は羊毛を多く使いますが、やはり衣と同じで自分の集めた筆にも贔屓の筆がでてきます。
そのようなことを極力なくすため、時折無理を言って自分好みの筆を作って頂きます。
書き心地、軸の色、形の美しさ、これらが揃った筆を作って頂いたときは嬉しい限りです。
そして、わくわくしながら筆をおろし線をひく。至福のときです。

そんな筆を作ってくださっているのは、この道のベテラン、伝統工芸士の香川さん。
訪ねた日は香川さんを筆頭に7人の職人さんが黙々と作業をしていらっしゃいました。
熊野の筆作りは江戸時代からだと聞きますが昔と変わらぬ手作業で、見ていても息をのむような緻密な作業です。
技は経験によるカンに頼るところが多く、長年の積み重ねが必要です。
本当に感謝、感謝です。

仿古堂さんの3階には、かつて筆をもとめ、個人的にも交流が深かったという
日本を代表する巨匠の作品が展示されています。ほとんどが、我々の学生時代に影響を受けた先生方で、
改めてその作の見事さに感服し、身のひきしまる思いでした。

仿古堂の皆様、。ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。

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