私の散歩コース、福岡城跡のお濠には、今、蓮の花が美しく咲いている。
早朝に見る蓮花は、いっそう、気高く美しい。

三十数年前、私は、尼僧（名を妙見と仰る）から書のお稽古を頼まれ、月に
２、３度、草深い尼寺に通っていた。
ある夏の日、妙見さんに「何か、ご心配事でもおありですか？」と、聞かれた。
その時、壁にぶつかり悩んでいた私はびくっとした。
そうしたら、妙見さんは、本堂に生けてある蓮花をみながらこう仰った。
「　泥中之蓮　、蓮の花はこの世で一番美しい花だと言われています。
しかし、あの気高く美しい花は泥水の中からしか立ち上がってこない。
大輪の花を咲かせるためには、泥水が必要なのですよ。・・・」

大輪の花を咲かせるには遠いが、いいお言葉を頂いたと思いながら、今日も早朝の静けさの中、
気高く全てを包み込むように咲いている蓮花をみながら歩いた。