文字の変遷 その4

前漢 後漢が終わり、隋、唐の大国家に統合されるまで、魏・呉・蜀の三国時代、
南北朝と355年に及ぶ乱世が続きました。この間も書体は絶えることなく変遷を繰り返しながら、やがて私達が現在常用する草書、行書、楷書へとそれぞれに成熟していきました。

草書は、漢の時代に隷書を早書きした草隷、草章とよばれるものが草書のはじまり
ですが、草書を完成したのは、あの永遠のエンターテイナーで「書聖」とよばれる
晋代の王羲之と、その子供の王献之らです。その後、唐代に入り、王羲之の書を継承した
孫過庭、張旭、懐素などが、伝統に拘束されない自由奔放な草書を書いていきました。
 

    孫過庭

  • 孫過庭
    懐素

  • 孫過庭

 
行書は、現在、私達が少し崩して書く書体で、草書と楷書の中間のものです。
楷書の発生より早く産まれたもので、楷書を崩したのではありません。
行書は、これも王羲之,献之親子が発展させ、当時の民衆の間でも大いに流行しました。

唐代に入り、時の皇帝の提唱により書法もさらに発展します。唐の太宗は、前代の書学を総括し、王羲之を「書聖」と推賞し、自らも書を得意としました。
王羲之の書、2000作を集め、中でも「蘭亭序」への愛着は強く、趙模、韓道政、馮承素、欧陽詢、虞世南、褚遂良などに臨模させ、ついに真跡は自らの柩に副葬させました。
書をしない人も知る有名な「蘭亭序」は、今も太宗と共に西安郊外の昭陵に眠っています。
 

    蘭亭序 二種

  • 懐素
  • 懐素
  •  
    日本の正式な公用文字は楷書ですが、これも唐代で完成しました。小学校で習う永字八法(縦、横、止め、はね、はらい)の「永」の字も、唐人が臨模した際に見つけたもので、楷書の基本を学ぶ際の練習の材料として使われてきました。

    また、書を学ぶ人の誰もがお手本にするもので、

    1. 揺るぎない究極の楷書・欧陽詢の「九成宮醴泉銘」
    2. 緩やかでおおらかで風格のある虞世南の「孔子廟堂碑」
    3. 抑揚に富んで飄然とした、褚遂良の「雁塔聖教序」

    は、何れも唐代です。
     

      1

    • 蘭亭序
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    • 蘭亭序
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    • 蘭亭序

     
    一方、この頃日本は、奈良・平安時代でした。日本にもたらされた漢字は、長い年月をかけて変遷し、あの美しい仮名文字を生みだしたのです。。