お稽古を始めるにはお道具はつきもの。書道も筆、紙、墨、硯が主な道具で、昔から「文房四時」と言われて大事にされてきました。
お道具は、普段から興味をもって見ると楽しいものです。墨の色の不思議、多種多様の紙、吸い込まれるような滑らかな感触の硯。様々な個性を持つ筆。
これらの道具は、書き手とあいまって書の可能性を無限に広げていきます。
今回はお道具のひとつ、筆について少しふれてみましょう。
筆は秦の時代(前221-206)に作られたと言われています。しかし甲骨文字(刀で彫られた文字)の下地はどうやら筆らしいという説もあり、そうなると殷の時代に存在したことになります。
いずれにしても長い歴史がありますね。筆の毛は、昔から動物の毛で出来ていますが、柔らかい毛は羊毛、うさぎ、猫など。硬い毛は山馬、鹿、狸などです。一般的には、柔剛さまざまに混毛された筆が多く愛用されているようです。
ちなみに私は柔らかい羊毛の 長峰(長い毛)を好んで使いますが、硬質な線を書きたい時には、うさぎの口髭や山馬などを使う事もあります。今凝っている筆は、羊毛が密に使われた短峰(短く揃った毛)です。
見ているだけで愛らしいのですが、墨を含ませると一段とぷっくりして愛らしく 書いてみるとこれまた愛らしくて温かみのあるものが書けます。この筆は、毛足2.5センチから4.5センチまで4種類つくってもらい、楽しんでいます。
ところで、書いた後の筆の手入れですが、やさしくきれいに水洗いして日陰干しでよいです。水道の蛇口にいきなり毛をあてるのはよくありません。また、新品のまま、しばらく使っていないもので、糊でかためられた筆の保管は、害虫に注意しなければなりません。
防虫剤などを入れて保管しましょう。たまにしか使わない筆は、毛の種類にもよりますが、筆の根元まで墨をつけておけば防虫になります。
求めたときについていた毛先のキャップを無理矢理元通りにはめようとする人がいますが、それはいけません。
吊り下げるか、筆巻きなどに巻いておきましょう。
筆は、表現するのに直接作用する道具です。触毛のやさしさも手伝ってか、集めるのを趣味にしているひとも多いようです。
徒然なるままに、お気に入りの硯で、好みに磨りあげた墨汁をゆっくりと含ませ、極上の紙に穂先を落とすとき・・・
それは至福のひとときです。